めっきの実験



  1. ノーシアン銀めっき


  銀メッキは、開発された当初から現在に至るまで、銀シアン錯体(Ag(CN)2)を主成分とするめっき処方である。それは、銀シアン錯体が、他の ヨウ化物錯体やアンミン錯体などと比べて 圧倒的に高い安定度定数(生成定数) Kf を有し、めっきされた銀の品質(平滑性、密着性、硬度、光沢、白色度、低膜応力)が優れ、広いめっき条件(温度、組成、不純物)で 浴が長期間安定に操業できるからである。 しかし、シアン化合物の猛毒性を嫌い、いくつかのノーシアン系の銀メッキ処方が報告されているので、これを実験することにする。
  ( (参照) → キレート錯体の物理化学 3.(1)

   

  めっき浴は、硝酸銀−アンモニア系の、 AgNO3(硝酸銀) 3.8g、 Na4P2O7(ピロリン酸ナトリウム、二リン酸ナトリウム) 2.3g、 KNO3(硝酸カリウム) 8.3g、 (NH4)2SO4(硫酸アンモニウム、硫安) 8.3g、 NH3(アンモニア水)(28%) 12ml を純水に溶かして 150ml とした。
  下地との付きを良くするための ストライクめっき浴は、シアン浴のときの被めっき材が 銅系統(銅、真鍮など)の場合は 銀濃度が約1/5、鉄系統(ステンレスなど)の場合は約1/20を目安にし、残りの成分を1.4倍〜2倍に増やすとして、銅板にめっきするので、 AgNO3 0.7g、 Na4P2O7 5g、 KNO3 12g、 (NH4)2SO4 12g、 NH3(28%) 30ml を純水に溶かして 150ml とした。(* 硝酸銀と硫安を混ぜて沈殿する硫酸銀はアンモニア水に容易に溶けるが、ピロリン酸ナトリウムは別個に調製して暖めないと溶けにくいので注意)
  また、陽極は、銀粒15gをバーナーで溶かし、時々加熱・アニールしながら清潔な金槌で叩いて延ばして作製した。

  被めっき材は、0.1mmtの銅箔(約60mm×約30mm、浸漬長 50〜55mm)を用い、酸洗浄は 約1M 硫酸に5分以上浸漬して 表面の酸化皮膜を除いた。
  めっき条件は、常温で、200ml トールビーカーで、電極間距離 約30mm、 マグネチックスターラーで緩やかに攪拌しながら、 ストライクめっき: 5V10秒、 本めっき: 0.15A(1A/dm2)、1〜5分で行なった。(めっき後は、銅が多少溶け込み 浴に青色が付く)



  結果は、@ 酸洗浄無し・本めっきのみでは、めっき浴中に銀が沈殿し、銅板を曲げると容易に剥離し、ほとんど下地とくっついていない状態だった。 A 酸洗浄をしてから、上記の条件でストライクめっきをすると、重曹で磨くと 粉末状の銀が取れて非常にムラになった。 B 酸洗浄 + ストライク浴浸漬では、漬けるだけでも無電解めっきされるが、付き方は弱い。 C 酸洗浄 + ストライク浴で本めっきの条件でめっきすると、白っぽい銀めっきが施され、重曹で磨くと銀色になり、これが最も良好だった。
  (* 酸洗浄が無いと、表面の酸化銅のバンド・ギャップが1.2eV、すなわち電解電圧に1.2Vが加算され、めっき電圧が高い割りに付着力が低下する)

  したがって、アンモニア系のノーシアンめっき浴は不安定であり、陰極に金属銀が粉末状に析出しやすく、厚付けや光沢めっきは無理で、希薄な銀濃度、かつ、低電流でなんとか可能である という結果だった。
  (* ヨウ化物系は、非常に高濃度で、浴代が高くつく)

   



  2. シアン系銀めっき 猛毒・取り扱い注意換気注意!


  猛毒にもかかわらず、浴の安定性による作業管理のしやすさや浴の寿命、めっき品質の良さから、現在 工業的に用いられているのは ほとんど全部がシアン浴である。(* シアン化合物の毒性は、一酸化炭素と同様に、血液中のヘモグロビンの鉄と結合しての細胞内酸素欠乏による。(経口致死量は成人の場合150〜300mg/人) シアン浴を用いる注意点としては、絶対こぼさない、素手で触れない、換気を充分するなどで、特に、酸や炭酸ガスと反応して発生するシアン化水素には注意する。 廃液には、硫酸鉄などの鉄イオン(U)を過剰に加え、鉄錯イオンとの反応物: 紺青(ベルリンブルー)としてセメントで固めるなどの処理をする。 → (参照)廃棄処理法: シアン化カリウムの下

  めっきの手順は、 @ ニッケルストライクめっき → A 銀ストライクめっき → B 銀本めっき で行なった。 @、Aは、Bの本めっきの密着性を向上させるために行なうが、それほど密着性を必要としない場合は@B、あるいは、Bのみで良い。

  @ ニッケル・ストライクめっき:  めっき浴は ウッド・ニッケル・ストライク浴を用い、 NiCl2・6H2O(塩化ニッケル) 36g、 36%HCl(塩酸) 18ml を純水に溶かして150ml とした。 銅板(0.1mmt×60mm×30mm)を 1M 硫酸で5分以上 酸洗浄後、200mlトールビーカーで 陽極に不溶解性電極(イリジウム-チタン使用; 白金-チタン、Ni 板、(少量ならば)ステンレスでも良い)を用い、約3V、1.5〜2Aで、1〜2分 めっきした。 30秒では不足で ムラになり、1分以上必要だった。
  (* 常温で行い、攪拌はしない。不溶解性陽極から塩素ガスが出るので換気注意。 陰極からは水素発生(Niの水素過電圧:1N H2SO4で0.21V)。 また、次の シアン浴に投入するため、酸性なので水洗を充分行なう。)

  

  A 銀ストライクめっき:  浴組成は、シアン化銀カリウム 1.4〜2.8g/l、シアン化ナトリウム 60〜150g/l であるが、ここでは シアン化銀を作り、カリウム系とした。ストライク浴は、銀粒子が充分突き刺さるように、銀を薄く、その他の成分を濃くして、大電流でめっきする。(鉄系にめっきする場合は、さらに薄くする。)
  KCN(シアン化カリウム)0.3gを(そのままめっき浴とする)300mlトールビーカーに入れて純水を加えて溶かし、これにAgNO3(硝酸銀) 0.77g(当量)を純水に溶かした液を加えて攪拌すると、凝乳状のシアン化銀が沈殿する。(AgNO3 + KCN → AgCN ↓ + KNO3) これを濾過せずに、上澄みを傾瀉(けいしゃ)して除き、さらに純水を加えて攪拌し上澄みを捨てることを2−3回行い洗浄する。 これに、KCN約10gを加えると沈殿は錯イオンとなって溶解する。さらに、(文献には書いていないが、入れておいたほうが良いと考え)安定剤として K2CO3(炭酸カリウム)約5gを加え、純水を加えて 約150mlとした。(このまま めっきに用いる。めっき後はポリびんに入れて保存)
  めっき条件は、@のニッケル・ストライクめっきをした銅板を用い、陽極を銀板(ステンレスでも良い)、約2V、0.9A程度で、30〜60秒で、スターラーで攪拌しながら行い、白っぽく光沢が少ない下地めっきとなった。銀は、水素過電圧が低い(1N H2SO4で0.15V)ので、水素を発生しながらのめっきとなった。

 

  B 本めっき:  浴の調製は、AgNO3(硝酸銀) 7.1g、 KCN(シアン化カリウム)2.7gにより、Aと同様に傾瀉・洗浄して AgCN(シアン化銀)の沈殿を作製し、これにKCN(シアン化カリウム)約5.5g、K2CO3(炭酸カリウム)約9g を加え、純水を加えて 約150mlとする。
  めっき条件は、スターラーで緩やかに攪拌しながら、銀陽極、約0.1A(この時0.25V)、3〜20分で行なった。(水素の発生は無い) 結果は、銀ストライクよりも銀色がかっていたが、下地の面粗さが充分覆われなかった。 いわゆる”装飾めっき”の”完全鏡面光沢”にするためには、さらにゆっくりめっきするか、バフ研磨が必要と思われる。 光沢銀めっきの場合、シアンのNa塩よりも K系が用いられる。これは、めっき析出速度が大きい、電導度が高いので付きまわりが良い、炭酸塩濃度の許容範囲が広い、などの理由による。

  また、光沢剤(CS2(二硫化炭素)0.3ml + アセトン0.6ml + 3%KCN10mlをねじ口試験管に入れ、1日1時間以上×1週間ほど振とうしたもの ・・・ CS2とケトン類との縮合生成物(赤色)が作用するといわれる)を数滴加えてめっきすると、銀表面に光沢が出てくる。(ただし、やや黄色味を帯びてくる。) 装飾銀めっきでは光沢剤は必須であり、めっき業界のノウハウになっている。

 


  3. ロジウムめっき


  ロジウム(Rh)は、白金族の中で最もめっきに多用され、鏡面反射率が高く( 注)不純物金属があると黒くなる)、耐摩耗性が高く、硬さも Hv800〜1000と非常に高く、電気抵抗が低く、色の経時変化が少ない優れためっき素材であり、古くからの装飾用のほかに、電気接点、光学部品などの工業的用途も大きい。 ただし、ロジウムが高価なため、また厚付けすると内部応力が大きくクラックが発生しやすいので、一般には”フラッシュめっき”(ストライクめっきよりも短時間)という極薄付けめっき(0.05μm程度)が行なわれる。(銀の変色防止、ホワイトゴールド(Au75%・Ag・Pd)の保護・白色化など。)  ロジウムめっきが装飾用に使用される場合は白さがポイントで、Rhのリン酸塩+硫酸浴が良いとされる。 一方、応力減少剤(タリウム塩など)の添加による厚付けも工業用として一部行なわれている。

  実験での評価は 光沢の具合と 耐変色性だけなので、銅板に酸洗・銀めっき(上記 2.B のみ・添加剤有)したものに ロジウムを薄付けした。
  めっき浴は、Rh(OH)3(水酸化ロジウム; 手製 → 貴金属の実験(2)@ )0.15gを、濃硫酸 4mlをとり 約50%硫酸として加熱して溶解させ、純水を加えて 100mlとする。(薄い硫酸には溶けないので注意)
  めっき条件は、不溶性陽極( I r −Ti メッシュ)を用い、浴温 40〜50℃、 3〜4Vで、1〜2A であり、10〜20秒 めっきした。(ストライクめっきのように、水素を発生しながらめっきが行なわれる。電源を入れてから浴に投入する。)
  結果は、銀よりもやや黒味がかった色で、光沢はあった。 変色テストとして、Na2S・9H2O(硫化ナトリウム)の3%水溶液に3時間漬けた結果は、銅や銀と同じように黒くなった(銅は電池反応により硫化物が剥離するほど腐食)が、これはロジウムの厚みが薄すぎるためと思われる。



  * 白金めっき(アンモニア浴)は、 貴金属の実験(2)A 参照 。 チタンに 10μm以上の厚めっきができる。

        ・・・・ 以上、(参考): 「貴金属めっき」、古藤田、槇書店、1992



  4. パーマロイめっき


  軟磁性材料のパーマロイ(Ni : Fe = 78.5 : 21.5、 50 : 50 など)のめっき品質は、特に、組成、膜厚、内部応力(比透磁率 μr が構造敏感なため)の管理が求められる。(* 一般のフープ材では、打ち抜き加工後 1100℃で水素アニール(焼きなまし)するが、基板に付いた状態ではこれができない。 ハードディスク用の薄膜磁気ヘッド(書き込み/読み取りの両方を一対の磁極で行なうため、μr も Bs も必要)では、非磁性で硬い(研磨加工性の良い)無電解Ni−P下地めっきにめっきする。)

  パーマロイめっき液( NiSO4・6H2O 56.2g、NiCl2・6H2O 1.5g、FeSO4・7H2O 2.4g、H3BO3 7.5g、サッカリンNa・2H2O 0.9g を上皿天秤で量り取り、脱イオン水に溶かして 300mlにした液)を、 不溶性陽極電流密度0.8A/dm2(図のドーナツ型(外径20mm、内径10mm、S=2.4cm2×2)の場合、40mA(この時 約2V)、 短冊状(幅 2.5cm・浸漬長 5cm)の場合は 100mA(2.7V))、浴温度は室温(* 21±2℃という条件は厳しく、本格的にやるにはそれなりの恒温装置が必要 ・・・ 今回、測定して23〜25℃)でめっきする。少し水素が出るので、時々揺らして表面の気泡を除く。 また、めっき液は、1ヶ月も放置すると 酸化して Fe(V)が沈殿するので、めっき直前に調製する。(光沢剤のサッカリンNaをサッカリンに変えたほうが良い)
  銅に付いたままのめっき膜を濃硝酸に入れると、電池反応のため 不働体にならずに 全部溶けてしまうので、膜のみを機械的に剥離した。 剥離したパーマロイめっき膜(1hrめっき)は約10mgで、膜厚は 約5μm(密度8g/cm3として計算)なので、めっき速度は 5μm/hr程度 とやや遅い。”反り”具合から膜応力は少なく、膜強度も充分あった。(* 通常は、段差計で膜厚を測る) 強固に接合させるためには、下地にニッケルストライクを施せば良いと思われる。

 

  @ 組成分析:  めっき表面の 蛍光X線分析や EPMAを分析業者に依頼する方法もあるが、ここでは 剥がして湿式分析することにした。

  プリント基板(巾25mm×浸漬長約50mm)に 酸洗無しでめっき(0.1A、2.7V、1hr)して、剥離して採取した膜は、S=9.0cm2、(上皿天秤で)約40mgより、膜厚 約5μmと予想される。 これを、少量の濃塩酸+H2O2 に溶かし、NH3で pH=7〜10とし、10分間煮沸してH2O2を完全に分解する。 Fe(V)が沈殿するので、これを濾過して Ni と Fe を分離する。
  Ni: 濾液を薄めて100mlとし、その10mlをとり、約50mlとする。 pH10緩衝液(NH3(28%)57ml + NH4Cl 7g /100ml)1.5ml、15%トリエタノールアミン0.5mlを加え、ムレキシド(MX)を指示薬として 0.01M EDTAで滴定する。
  Fe: 濾紙に残った水酸化鉄を、できるだけ少量の熱濃塩酸で溶出させ、純水で濾紙を注意深く洗い鉄分を採取し 100mlの溶液として、そのうちの10mlをとり約50mlとする。 これを、酢酸 と NH3で pHを測りながら pH=2〜3に調整して、バリアミンブルー(VBB)を指示薬として 0.01M EDTAで滴定する。
  ((参考) → 3.キレート滴定の実験 (4)

  結果は、 0.01M EDTAの所要量が、Ni: 3.75ml、 Fe: 2.04ml であり、 剥がした膜全体について、 Ni: 10×3.75×0.5871 = 22.0mg、 Fe: 10×2.04×0.5585 = 11.4mg であり、トータル 33.4mg、 したがって、(パーマロイの密度8.25g/cm3として)平均膜厚は 約4.5μm、また、 平均膜組成は、Ni: 66wt%、 Fe: 34wt% となった。

 

  A 比透磁率の測定:  プリント基板に 1hr めっきしたトーラス状のパーマロイ膜(φ20mm×φ10mm×約5μmt)に、φ0.3mmホルマル線を20T巻いて、インダクタンスメータ(Lメータ)((参考):Lメータの 回路(秋月電子のキット))で L(μH)を測定し、比透磁率 μr を算出した。
  結果は、L = 3.4μHf = 1kHz、数mA程度の微弱な電流)だった。 R1= 5mm(内半径)、R2= 10mm(外半径)、厚さ h= 5μm、コイルの巻き数 n= 20T より、
  比透磁率 μr = 2πL/(4π・10−7・n2・h・ln(R2/R1))
           = 2π・10−6・L(μH)/(4π・10−7・(20)2・0.000005(m)・ln(10/5)) = 3610・L(μH)
であり、 L=3.4 を代入すると、 μr = 12000 程度になった。

  冷間圧延フープ材の水素アニール後のデータは、パーマロイ PB(Ni 45%、残 Fe、密度8.25g/cm3): μr(初比透磁率)=14000、 μrmax(最大比透磁率)=94000、 パーマロイ PC(Ni 77〜78、Mo 5、Cu 4、残 Fe): μr(初比透磁率)=45000、 μrmax(最大比透磁率)=160000 なので、めっきされた膜は アニール無しでも ある程度の比透磁率を持っていることが分かった。(* ただし、薄膜なので、この実験の測定値は初比透磁率ではないようで、計算にも補正が必要と思われる。)

  

  4’ 鉄−コバルトめっき: 

  Fe−Co めっきも試みたが、(文献による)浴がきわめて不安定で、めっき中から酸化によって Fe(OH)3が沈殿し、黒く、粗くなり、めっき浴の時間が経つと膜がボロボロに剥がれてしまった。(ホウ酸などの安定剤を加える必要がある)  作りたての浴によるトーラス状めっき膜は、コイルを 20T巻いて、L=2.1μH であり、そこそこの透磁率があることが分かったが、膜厚が分からないので μrの計算はできなかった。
  浴組成は、 CoSO4・7H2O 21g、 FeSO4・7H2O 21g、 酢酸ナトリウム(3水塩) 6g、(pH=4) を純水に溶かして150mlとする。 めっき条件は、2A/dm2 すなわち、トーラス2個で 100mA、2.6V、30分、 短冊で、250mA、3.3V、30分、であり、めっき中に水素が若干発生した。浴温度は23℃。(組成は温度によって大幅に変化し、19℃で Fe 62%、90℃で Fe 30% といわれる)
  



  5. 白金黒めっき


  白金は、酸化・還元触媒として用いるために、微細な粒子としてめっきし表面積を広げて用いられる。

  @ 白金黒めっき:  塩化白金酸(H2PtCl6・6H2O) 1g、 酢酸鉛((CH3COO)2Pb・3H2O) 0.01g を純水に溶かして30〜50mlにした溶液を、白金を陰極として 30mA/cm2、5〜10分電解すると、白金表面に非常に表面積の広い 白金黒が生成する。 実験では、φ0.5mmの白金線を φ5mmで15T巻いたものを用いた。(100mA、4V、10分; 均一に付くように黒鉛陽極を動かしながらめっきする) その後、1M 硫酸で 電極を入れ替えて電解(アノード分極・カソード分極; 各100mA、2.5V、5分)して、白金黒に吸着された水素と酸素を除く。 白金黒付き白金は、乾燥させないよう純水中に保存する。

  * 水素標準電極に用いる場合は、1M HClに浸し、水素を効率よく吹き付ける工夫が必要。
  ** 数cm角のニッケル金網に白金黒めっきを施せば、水素−酸素・燃料電池の実験(in 2〜4M KOH)ができる。 ただし、ニッケルは卑なので、長期間使用により腐食して白金が脱落するので注意。
  *** 粉末の白金黒は、H2PtCl6 を NH3 過剰で溶解し、HCHO(ホルマリン) あるいは 蟻酸Na で還元して作る。 白金黒は非常に活性な触媒で、1gで 20〜40m2もの表面積をもち、体積で 110倍の水素、100倍の酸素を吸蔵するといわれる。(アルコールランプを着火し、水素−酸素混合ガス中に入れると爆発する) また、白金黒は、理想的な”黒体”に近いので、白金黒めっきを施した白金はサーモパイルに用いられる。

 

  A 白金石綿:  塩化白金酸(H2PtCl6・6H2O)の濃溶液に、グラスウールや SiO2ウールを浸し、乾燥させ強熱すると、分解した白金が表面に付着した(石綿は使われていないが、いわゆる)”白金石綿(はっきんせきめん)”ができる。 これは、主に酸化触媒に用いられる。(二酸化硫黄 → 三酸化硫黄 → 硫酸、 アルコール → アルデヒド、白金カイロなど)

 


     (付録)  貴金属めっき浴の主な処方: (g/l)         by. 「貴金属めっき」、古藤田、槇書店、1992

                       * その他のめっき( → めっきの実験・下 参照)

  ○ 銀めっき:

  ・ AgCN (金属銀として)25〜33、 KCN 30〜45、 K2CO3 30〜90;  0.5〜1.5A/dm2、20〜25℃

  ・ AgCN (金属銀として)25〜33、 NaCN 30〜38、 Na2CO3 38〜45;  0.5〜1.5A/dm2、20〜25℃

  ・ AgCN (金属銀として)36〜114、 KCN 45〜160、 K2CO3 15〜75、 KOH 4〜30;  0.5〜1.0A/dm2、38〜50℃

  ○ 銀ストライクめっき:

  ・ 鉄系・Ag浴; KAg(CN)2(シアン化銀カリウム) 1.4〜2.8、 NaCN 60〜150、 (* 文献にはこれだけしかないが、安全のためにK2CO3を加えた方が良いと思われる); 1.5〜2.5A/dm2、4〜6V、1〜2分、20〜25℃、陽極 ステンレス板

  ・ 鉄系・Ag−Cu浴; AgCN (金属銀として)0.8〜1.5、 Cu2(CN)2(シアン化第一銅) (銅として)6.0〜7.5、 KCN 50〜60、 (* 文献にはこれだけしかないが、安全のためにK2CO3を加えた方が良いと思われる);  0.1〜0.2A/dm2、5〜10分、15〜20℃、陽極 ステンレス板

  ・ 銅系; KAg(CN)2 5.6〜8.3、 NaCN 60〜90、 (* 文献にはこれだけしかないが、安全のためにK2CO3を加えた方が良いと思われる); 1.5〜2.5A/dm2、4〜6V、30〜60秒、20〜25℃、陽極 ステンレス板

  ○ ウッドニッケルストライクめっき:

  ・ NiCl2・6H2O 240、 HCl(37 v%) 120ml/l;  15A/dm2、1〜2分、20〜35℃、陽極 Ni板

  ※ 光沢剤

  ・ CS2 28gを エーテル 56gに溶解し、1lの銀めっき液に加え、7〜14日振とうした液を、100lの銀めっき浴に75ml加える

  ・ Cs2 6gと KCN 30gを 1lの水に溶かし、30時間振とうし、この7mlを銀めっき浴 100l に加える

  ○ 高速度銀めっき:

  ・ Cu素材上; KAg(CN)2 25、 KH2PO4 50、 K2HPO4 100、 K2HPO4・3H2O 130;  20A/dm2以上、70℃、pH7.0

  ○ ノーシアン銀めっき:

  ・ Ag2SO4 30、 NH3(25%) 75ml、 KI 600、 Na4P2O7(ピロリン酸ナトリウム) 60;  2A/dm2、室温

  ・ AgI 40〜80、 NaI 400〜600、 PVA(ポリビニルアルコール) 0.5〜2、 Na2S2O3 1.2;  0.5〜3.0A/dm2、室温

  ・ AgNO3 20〜30、 Na4P2O7(ピロリン酸ナトリウム) 20〜25、 NH3 60〜100ml/l、 NaNO3 40〜70、 (NH4)2SO4 40〜70;  0.8〜1.1A/dm2、室温



  ○ 薄付け金めっき:

  ・ 純金浴; KAu(CN)2(シアン化第一金カリウム) 1.23〜2.0、 KCN 7.5、 K2HPO4 15;  1〜4A/dm2、60〜70℃

  ・ 白金; KAu(CN)2 0.41、 KCN 15、 K2HPO4 15、 K2Ni(CN)4 1.1;  3〜6A/dm2、65〜70℃

  ・ 青金; KAu(CN)2 2、 KCN 7.5、 K2HPO4 15、 KAg(CN)2 0.26;  1〜3A/dm2、55〜70℃

  ・ 赤金; KAu(CN)2 0.82、 KCN 4、 K2HPO4 15、 K2Ni(CN)4 0.21、 K2Cu(CN)3 2.64;  3〜4A/dm2、55〜70℃

  ○ 厚付け金めっき:

  ・ 弱酸性浴; クエン酸+クエン酸Na 80〜100、  KAu(CN)2 8、 スルファミン酸Ni 3.0、 酢酸Zn 0.5;  pH3.0〜5.0

  ○ 金銀合金めっき:

  ・ KAu(CN)2 (Auとして) 8、 KAg(CN)2 2.5、 KCN 100、 アミン塩 5、 界面活性剤 少量;  1A/dm2、27℃

  ○ 金銅合金めっき:

  ・ KAu(CN)2 12、 K2Cu(CN)3(シアン化銅カリウム) 7、 KSCN(ロダンカリウム) 10、 2-ピリジンカルボン酸 8、 (KOHで)pH 8;  0.4A/dm2、70℃

  ○ 亜硫酸金めっき:

  ・ 亜硫酸金(T)Na・イミノ錯塩 12、 Na2SO3 50、 クエン酸Na 50、 四ホウ酸Na 10;  (As 1次光沢剤 5〜30mg、 Cd 2次光沢剤 4〜32mg)



  ○ 白金めっき:

  ・ Pt(NH3)2・(NO2)2(P塩、ジニトロジアミン白金) 10、 NH4NO3 100、 NaNO2 10、 NH3(28%) 55ml/l;  1A/dm2、90〜92℃、電流効率10〜20%

  ・ Pt(NH3)2・(NO2)2 16.5、 酢酸Na 70、 Na2CO3 100;  80〜90℃、0.5A/dm2、電流効率35〜40%

  ○ パラジウムめっき:

  ・ Pd(NH3)2Cl2(ジアンミン第一パラジウム塩化物) (Pdとして)2、 (NH4)2SO4 30、 KCl 15、 NH3(28%) 8ml/l、 ベンズアルデヒド-O-Naスルホネート 2、NiSO4・6H2O 0.2;  pH5.5〜7.0、0.4〜1.6A/dm2、50℃

  ・ Pd(NH3)2(NO3)2(ジアンミンパラジウム亜硝酸塩) (Pdとして)2、 (NH4)2HPO4(二塩基リン酸アンモニウム) 95、 NH3(28%) 24ml/l;  pH9.2、1.1A/dm2

  ・ Pd(NH3)2(NO3)2 (Pdとして)10、 NH4NO3 90、 NaNO2 10;  pH8〜9、1.0A/dm2、70℃

  ○ パラジウム・ニッケルめっき:

  ・ Pd(NH3)2Cl2 40、 NiSO4・6H2O 45、 NH3 90ml/l、 (NH4)2SO4 50、 光沢剤;  pH8.5、1A/dm2、30℃、 Pd/Ni=80/20

  ○ ロジウムめっき:

  ・ 薄付け浴(0.05〜0.5μm); Rh(硫酸ロジウムとして) 1.5〜2.0、 H2SO4(96%) 25〜50ml/l;  1〜10A/dm2、3〜6V、40〜50℃

  ・ 薄付け浴(0.05〜0.5μm); Rh(リン酸ロジウムとして) 2、 H2SO4(96%) 25〜50ml/l;  1〜10A/dm2、3〜6V、40〜50℃

  ・ 厚付け浴(2〜10μm); Rhとして 5、 H2SO4(96%) 50、 TlNO3(硝酸タリウム(T)) 0.05、 スルファミン酸 40、 ベンズアルデヒド-2、4-ジスルホン酸Na(または、1、5ナフタレンジスルホン酸2Na) 0.4;  1.25A/dm2、50℃、 電流効率 60%以上、 ρ=23×10−6Ωcm、Hv900、半光沢〜光沢

  ・ 厚付け浴(2〜10μm); Rh(硫酸ロジウムとして) 10、 H2SO4(96%) 15〜200ml/l、 H2SeO4(セレン酸) 0.1〜1;  1〜2A/dm2、50〜75℃




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